教えて!岡本さん Vol.2

『教育基本法』改正 ここがポイント!

〜民主党案と政府案の論点比較表〜

○ 「愛国心」

民主党案
政府案

[前文]
 〜日本を愛する心を涵養し、祖先を敬い、子孫に想いをいたし、伝統、文化、芸術を尊び、学術の振興に努め、他国や多文化を理解し、新たな文明の創造を希求することである。〜

(教育の目標) [第二条5項]
 伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと。

【 ポイント 】

 民主党案の「涵養」は、「自然に水がしみこむように徐々に養い育てる」という意味である。また、民主党案では、法的拘束力のない「前文」に記述しており、法律全体の精神、そして解釈の指針となるものである。当然ながら、強制という意図は全く含まないものである。
 一方、政府案は、第二条(教育の目標)として、「我が国と郷土を愛する〜態度を養う」と表現で、法的拘束力のある条文に規定しており、強制につながるではないかという懸念がある。さらに、「態度を養う」との表現は意味不明。

○ 「学ぶ権利の保障」や「教育機会・環境の確保整備」 

民主党案
政府案

(学ぶ権利の保障)
[第二条]
 何人も、生涯にわたって、学問の自由と教育の目的の尊重のもとに、健康で文化的な生活を営むための学びを十分に奨励され、支援され、及び保障され、その内容を選択し、及び決定する権利を有する。

(適切かつ最善な教育機会・環境の確保・整備)
[第三条]
 何人も、その発達段階及びそれぞれの状況に応じた、適切かつ最善な教育の機会及び環境を享受する権利を有する。
2 何人も、人種、性別、言語、宗教、信条、社会的身分、経済的地位又は門地によって、教育上差別されない。
3 国及び地方公共団体は、すべての幼児、児童及び生徒の発達段階及びそれぞれの状況に応じた、適切かつ最善な教育の機会及び環境の確保及び整備のための施策を策定し、及びこれを実施する責務を有する。
4 国及び地方公共団体は、経済的理由によって修学困難な者に対して、十分な奨学の方法を講じなければならない。

 

(学ぶ権利の保障)
 記述なし

 

 

(教育の機会均等)
[第四条]
 すべて国民は、ひとしく、その能力に応じた教育を受ける機会を与えられなければならず、人種、信条、性別、社会的身分、経済的地位又は門地によって、教育上差別されない。
2 国及び地方公共団体は、障害のある者が、その障害の状態に応じ、十分な教育を受けられるよう、教育上必要な支援を講じなければならない。
3 国及び地方公共団体は、能力があるにもかかわらず、経済的理由によって修学が困難な者に対して、奨学の措置を講じなければならない。

 

 

【 ポイント 】

 民主党案は、これまでの単なる平等主義から脱却し、それぞれの子どもの発達状況に応じた教育機会の確保・整備を目指すこととしている。一方、政府案で規定している、形式上の平等だけでは、子どもにとって最善の教育環境の確保・整備は全く図られないと考えられる。なお、民主党案「学ぶ権利」は、日本国民に限定していないところも大きなポイント。

○ 幼児期の無償教育の導入

民主党案
政府案

(幼児期の教育)
[第六条]
 幼児期にあるすべての子どもは、その発達段階及びそれぞれの状況に応じて、適切かつ最善な教育を受ける権利を有する。
2 国及び地方公共団体は、幼児期の子どもに対する無償教育の漸進的な導入に努めなければならない。

 

(幼児期の教育)
[第十一条]
 幼児期の教育は、生涯にわたる人格形成の基礎を培う重要なものであることにかんがみ、国及び地方公共団体は、幼児の健やかな成長に資する良好な環境の整備その他適当な方法によって、その振興に努めなければならない。

【 ポイント 】

 民主党案の特徴は、幼児期の子どもに対する無償教育の漸進的な導入を明記した点である(政府案には無償教育の記載なし)。現在、5%〜10%の子どもが幼稚園や保育園に行かずに、小学校へ入学している。よりスムーズな就学を図る意味で、幼児教育の漸進的な無償化が必要だと考える。

○ 普通教育・義務教育の責任の所在

民主党案
政府案

(普通教育・義務教育)
[第七条3 項]
3 国は普通教育の機会を保障し、その最終的な責任を有する。

 

(義務教育)
[第五条3 項]
3 国及び地方公共団体は、義務教育の機会を保障し、その水準を確保するため、適切な役割分担及び相互の協力の下、その実施に責任を負う。

【 ポイント 】

 民主党案では、国が最終的な責任を有することとなっている。政府案は、責任の所在が不明確な現在の文教行政体制を改善することに何ら言及していない。
 民主党は、普通教育や義務教育のより一層の充実を図るため、民主党案を成立させ、それを受けて「学校教育法」や「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」などの法改正も検討していく。

○ 高等教育の無償化

民主党案
政府案

(高等教育)
[第八条3 項]
3 高等教育については、無償教育の漸進的な導入及び奨学制度の充実等により、能力に応じ、すべての者に対してこれを利用する機会が与えられるものとする。

高等教育の無償化については記載なし

 

【 ポイント 】

 民主党案は、高等教育無償化の理念を盛り込んでいる。05年民主党マニフェストにも記載しているが、国際人権規約を批准している国で、高等教育無償化条項を留保しているのはマダガスカル、ルワンダ、日本の3 カ国のみ。自民党の長期政権の中で、日本の高等教育における家計負担は約6 割になった。アメリカでも3 割、ヨーロッパでは1割、スウェーデンについては0 割と、日本が著しく高い。格差が世代間連鎖している今こそ、こういった取り組みが必要だと考える。

○ 建学の自由・私立の学校の振興

民主党案
政府案

(建学の自由・私立の学校の振興)
[第九条]
 建学の自由は、別に法律で定めるところにより、教育の目的の尊重のもとに、保障されるものとする。国及び地方公共団体は、これを最大限尊重し、あわせて、多様な教育の機会の確保及び整備の観点から、私立の学校への助成及び私立の学校に在籍する者への支援に努めなければならない。

(私立学校)
[第八条]
 私立学校の有する公の性質及び学校教育において果たす重要な役割にかんがみ、国及び地方公共団体は、その自主性を尊重しつつ、助成その他の適当な方法によって私立学校教育の振興に努めなければならない。

 

【 ポイント 】

 民主党案では、利用者の選択肢の幅を拡充し、質のよい場所を提供していくことを念頭に、教育の目的を前提とした建学の自由を明記した。また、将来的にバウチャー制度の導入へ向けての第一歩となるよう、私学に在籍する者への支援・助成の規定を盛り込んだ。

○ 特別な状況に応じた教育

民主党案
政府案

(特別な状況に応じた教育)
[第十三条]
 障がいを有する子どもは、その尊厳が確保され、共に学ぶ機会の確保に配慮されつつ自立や社会参加が促進され、適切な生活を享受するため、特別の養護及び教育を受ける権利を有する。国及び地方公共団体は、障がい、発達状況、就学状況等、それぞれの子どもの状況に応じて、適切かつ最善な支援を講じなければならない。

(教育の機会均等)
第四条
2 国及び地方公共団体は、障害のある者が、その障害の状態に応じ、十分な教育を受けられるよう、教育上必要な支援を講じなければならない。

 

 

【 ポイント 】

 民主党案では、新しく項目を立てて、それぞれの子どもにとって、適切かつ最善な支援が行われることを明記している。政府案には、民主党案のように項目立てした規定はない。

○ 職業教育

民主党案
政府案

(職業教育)
[第十四条]
 何人も、学校教育と社会教育を通じて、勤労の尊さを学び、職業に対する素養と能力を修得するための職業教育を受ける権利を有する。国及び地方公共団体は、職業教育の振興に努めなければならない。

記載なし

 

 

【 ポイント 】

 民主党は、ニート・フリーター問題が日本社会の根底を揺るがしかねないとの認識から、職業教育への取り組みを盛り込んだ。政府案には、そのような規定はない。

○ 宗教教育

民主党案
政府案

(生命・宗教に関する教育)
[第十六条]
 生の意義と死の意味を考察し、生命あるすべてのものを尊ぶ態度を養うことは、教育上尊重されなければならない。
2 宗教的な伝統や文化に関する基本的知識の修得及び宗教の意義の理解は、教育上重視されなければならない。
3 宗教的感性の涵養及び宗教に関する寛容の態度を養うことは、教育上尊重されなければならない。
4 国、地方公共団体及びそれらが設置する学校は、特定の宗教の信仰を奨励し、又はこれに反対するための宗教教育その他宗教的活動をしてはならない。

(宗教教育)
[第十五条]
 宗教に関する寛容の態度、宗教に関する一般的な教養及び宗教の社会生活における地位は、教育上尊重されなければならない。
2 国及び地方公共団体が設置する学校は、特定の宗教のための宗教教育その他宗教的活動をしてはならない。

 

 

【 ポイント 】

 宗教教育について政府案は、「宗教に関する寛容の態度、宗教に関する一般的な教養及び宗教の社会生活における地位は、教育上尊重されなければならない」との書きぶりに留まっている。これに対し民主党案では、@知識の習得、A意義の理解、B宗教的感性の涵養、など盛り込んでいる。

○ 情報文化社会に関する教育

民主党案
政府案

(情報文化社会に関する教育)
[第十七条]
 すべての児童及び生徒は、インターネット等を利用した仮想情報空間におけるコミュニケーションの可能性、限界及び問題について、的確に理解し、適切な人間関係を構築する態度と素養を修得するよう奨励されるものとする。
2 すべての児童及び生徒は、文化的素養を醸成し、他者との対話、交流及び協働を促進する基礎となる国語力を身につけるための適切かつ最善な教育の機会を得られるよう奨励されるものとする。
3 すべての児童及び生徒は、その健やかな成長に有害な情報から保護されるよう配慮されるものとする。

記載なし

 

 

 

 

【 ポイント 】

  民主党は、生まれながらにして情報社会の真っ只中にいる子どもたちを、残虐な暴力などの有害情報から守るため、この項目を盛り込んだ。表現の自由にも配慮しつつ、情報社会に生きる子どもたちが、情報のもつ意味を正しく理解し、活用できる能力(メディアリテラシー)を育む教育を推進していきたいと考える。
政府案にはこのような規定はない。

○ 教育行政(学校理事会・不当な支配、学校評価制度など)

民主党案
政府案

(教育行政)
[第十八条]
 教育行政は、民主的な運営を旨として行われなければならない。
2 地方公共団体が行う教育行政は、その施策に民意を反映させるものとし、その長が行わなければならない。
3 地方公共団体は、教育行政の向上に資するよう、教育行政に関する民主的な組織を整備するものとする。
4 地方公共団体が設置する学校は、保護者、地域住民、学校関係者、教育専門家等が参画する学校理事会を設置し、主体的・自律的運営を行うものとする。

(教育行政)
[第十六条]
 教育は、不当な支配に服することなく、この法律及び他の法律の定めるところにより行われるべきものであり、教育行政は、国と地方公共団体との適切な役割分担及び相互の協力の下、公正かつ適正に行われなければならない。
2 国は、全国的な教育の機会均等と教育水準の維持向上を図るため、教育に関する施策を総合的に策定し、実施しなければならない。
3 地方公共団体は、その地域における教育の振興を図るため、その実情に応じた教育に関する施策を策定し、実施しなければならない。
4 国及び地方公共団体は、教育が円滑かつ継続的に実施されるよう、必要な財政上の措置を講じなければならない。

【 ポイント 】

 民主党は、現行法及び政府案にある「不当な支配」の文言を削除し、「民主的な運営」という文言を用いた。それは、不当な支配を容認するというわけではなく、教育現場において「不当な支配」という言葉の定義を巡って不毛な論争が続いていることから、それを廃するために「民主的な運営」とした。民主的という言葉からは、構成員が意思決定の中に入り、意見を熟すことにより、下から積み上げることが可能であるという理解・連想ができるが、「不当な支配」からはそれが連想できない。
 現在の教育行政は三位バラバラ(設置者は市町村/人事権は都道府県/学習指導要領は国)であり、これを見直していかなければならない。学校の主体的な運営を促していくため、学校理事会の設置(コミュニティ・スクール化)についても言及した。国がナショナルミニマムやシビルミニマムを定めるなど最終責任をもって、枠組みや教育環境の整備を行い、運営などの権限は現場に委譲していくべきだと考える。
 さらに、民主党案では、学校評価制度の導入する仕組みを明記したことにより、利用者やその保護者にとって、わかりやすい教育が実現できると考える。

○ 教育振興に関する計画(対GDP 比)と教育財政

民主党案
政府案

(教育振興に関する計画)
[第十九条1 項、2 項]
 政府は、国会の承認を得て、教育の振興に関する基本的な計画を定めるとともに、これを公表しなければならない。
2 前項の計画には、我が国の国内総生産に対する教育に関する国の財政支出の比率を指標として、教育に関する国の予算の確保及び充実の目標が盛り込まれるものとする。

(教育財政)
[第二十条]
 政府及び地方公共団体は、前条第一項又は第四項の計画の実施に必要な予算を安定的に確保しなければならない。

(教育振興基本計画)
[第十七条1 項]
 政府は、教育の振興に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、教育の振興に関する施策についての基本的な方針及び講ずべき施策その他必要な事項について、基本的な計画を定める。

(教育財政)については記載なし

 

 

【 ポイント 】

 民主党は、教育に関する国の予算を安定的に確保していくため、公教育財政支出について、日本の国内総生産(GDP)に対する比率を指標とすることとした。日本の教育機関に対する公財政支出(対GDP 比)は3.1%で、米国が5%、OECD平均は4.7%となっていて、日本の状況が著しく低いことがわかる。 これについて、政府案には財政に関しての具体的な規定は全く盛り込まれていない。